キジハタ(アコウ)の寄生虫|アニサキスの確率と黒い粒の正体

磯場に置いた釣りたてのキジハタ(アコウ)

こんにちは、つりはる編集長のはるです。

キジハタ——関西で言う「アコウ」を捌いていて、皮やヒレのあたりに黒い粒や棒のようなものを見つけて、手が止まったことはありませんか。

私はこれまでにキジハタを500匹以上釣り、小型やたくさん釣れた日の分はリリースしつつ、200匹以上を自分で捌いて食べてきました。その実測から先に言うと、キジハタの寄生虫はかなり高頻度で見つかります。ただし、危険なアニサキスは1%以下。見た目のインパクトが強い虫のほとんどは、人には無害です。

この記事では、200匹以上捌いた実測の確率と、黒い粒・黒い棒の正体、刺身で安全に食べるための処理をまとめます。

目次

まず結論|キジハタで出会う寄生虫と危険度

寄生虫私の遭遇頻度見つかる場所人への危険
リリアトレマ(黒い粒)10匹に1匹ほど皮・ヒレまわり(外から見える)・身無害
ペンネラ類(通称イカリムシ・黒い棒)リリアトレマより少ない体表・ヒレの付け根無害
アニサキス200匹以上で2匹(1%以下)内臓→鮮度落ちで身へ危険(食中毒)
タイノエ1回だけ口の中無害

何かしらの寄生虫に出会うのは、体感で7〜8匹に1匹夏場は5匹に1匹ほどに増え、冬は10匹に1匹ほどに減ります。数字だけ見るとぎょっとしますが、そのほとんどは見た目が悪いだけの無害な虫です。この記事で扱う虫のなかで唯一警戒すべきアニサキスは、後述のとおり処理しだいでかなり抑えられます。順に説明します。

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200匹以上捌いて分かった実測の確率

船の上で手に持った釣りたてのキジハタ(アコウ)

私の地元では、キジハタは昔は特定の地磯まで行かないとあまり釣れない魚でした。それが近年——温暖化の影響なのか——いろんな場所で釣れるようになり、1日に大量に釣れることも増えました。捌く数が増えたぶん、寄生虫のデータも溜まりました。

  • 何かしらの寄生虫との遭遇: 7〜8匹に1匹——季節差が大きく、夏は1/5、冬は1/10ほど
  • アニサキス: 200匹以上でわずか2匹(1%以下)——しかも2匹とも、釣ってから内臓を抜いていなかった個体
  • 一番よく見るのはリリアトレマ(黒い粒): 10匹に1匹ほど——釣った瞬間に外から見えることもある
  • タイノエ(口の中の虫)はこれまでに1回だけ

季節差についても触れておきます。キジハタは夏がハイシーズンで、釣れる数も夏がピークですが、寄生虫の遭遇率も夏場のほうが明らかに高いというのが私の実感です(体感で1/5)。水温が高い時期はエサとなる小魚や甲殻類の活動も活発で、寄生虫のサイクルも回りやすいのだと思います。「旬だから刺身で食べたい時期」と「虫が多い時期」が重なるのがキジハタの悩ましいところで、だからこそ夏場ほど、後述の処理と目視を丁寧にやる価値があります。

注目してほしいのは、アニサキスを見つけた2匹がどちらも内臓を処理していなかった個体だったことです。私は基本、釣り場で内臓を抜いてから持ち帰ります。アニサキスはもともと内臓にいて、鮮度が落ちると身へ移動する寄生虫なので、「釣ったらすぐ内臓を抜く」だけでリスクの大半を断てる——実測の数字がそれを裏付けています。

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黒い粒・黒い棒の正体|種類別の見分け方

まな板の上に置いた釣ってきたキジハタ(アコウ)

リリアトレマ・スクリャビニ|身や皮の「黒い粒」

キジハタの寄生虫で一番よく見るのがこれです。黒いゴマのような粒が、皮の下や身の中に入っています。私の経験ではヒレの付け根まわり(カレイでいうエンガワにあたる位置)に付いていることが一番多く、釣った瞬間に外から見えることもあります。

この黒い粒は、リリアトレマ・スクリャビニという吸虫の幼虫だと考えられています(公的機関の同定例はクロソイなど北の根魚が中心ですが、根魚に広く見られる寄生虫で、キジハタの黒い粒もこれを指して呼ばれるのが一般的です)。面白いのは、黒いのは虫そのものではないこと。入り込んだ幼虫を魚の体が異物反応で袋状に包み、その袋に黒い色素(メラニン)が沈着した結果で、黒い皮を剥がすと中から白く半透明の幼虫が出てきます。

成虫はヒメウやセグロカモメといった海鳥から見つかっており、最終的には海鳥に寄生する虫です(魚に入るまでの経路は、実はまだ解明されていません)。人に寄生するとは考えられておらず、食べて害があったという報告もありません(北海道立水産試験場・自治体の食品衛生相談事例)。

とはいえ気持ちのいいものではないので、私は見つけたら包丁の先でこそげ取るか、その部分だけ切り取っています。粒を取り除けば、残りは普通に食べられます。皮を引くと一緒に取れてしまうことも多いので、刺身にする場合は実害がさらに小さいのもポイント。「黒い粒がびっしりで気持ち悪い」という個体に当たったら、無理せず干物や加熱料理に回してください。

ヒジキムシ科のカイアシ類(通称イカリムシ)|体表の「黒い棒」

体の外側に、黒いヒジキのような棒が刺さっていることがあります。釣り人の間では「イカリムシ」「ヒジキムシ」と呼ばれますが、標準和名の「イカリムシ」は淡水魚に寄生する別の虫です。海のハタ類に付くこの黒い棒は、ヒジキムシ科のカイアシ類——エビやカニと同じ甲殻類の仲間(ペンネラ属やイカリムシモドキ属など)を指しているのが実態で、種の見分けは難しいためこの記事では「ペンネラ類」とまとめて呼びます。私の経験では、これもヒレの付け根まわりに付いていることが多いです。

頭部を魚体に食い込ませて固定しているので、引き抜くか、周りごと切り取れば問題ありません。人に寄生した報告はなく、食べる分には支障ありません。見た目のインパクトでリリースしたくなりますが、心配のいらない虫です。

アニサキス|この中で唯一、本当に警戒すべき虫

白く細長い糸状の虫で、これだけは食中毒(激しい腹痛)の原因になります。ただし前述のとおり、私の実測では200匹以上で2匹=1%以下。サバやアジのような青魚と比べれば、キジハタの寄生率はかなり低い部類です。それでもゼロではないので、刺身にする前の目視チェックだけは省略しないでください。

タイノエ|口の中の住人

口の中にダンゴムシのような虫が入っていることがあります。タイノエ(ウオノエ類)です。私も200匹以上で1回だけ見たことがあります。見た目は強烈ですが人には無害で、口の中にいるだけなので身への影響もありません。取り除けば普通に食べられます。

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釣ったキジハタの下処理|私の実際の手順

私が釣り場でやっているのは、シンプルに「内臓を抜くだけ」です。血抜きまでするのは、大型で脂が乗っていそうで、刺身で食べると決めている個体くらい。それでもアニサキスの遭遇が1%以下に収まっているのは、内臓の早抜きがそれだけ効くということだと思っています。

  • ①釣ったら内臓を抜く——アニサキス対策の本体。ついでに外側の黒い粒・棒もチェック
  • ②氷を効かせて持ち帰る——鮮度維持がそのまま虫の移動防止になる(ここは誰でも同じ)
  • ③捌くときにヒレまわりを重点チェック——リリアトレマもペンネラ類もヒレ付近が定位置
  • ④刺身なら身を目視——白い糸状の虫がいないか。不安なら冷凍(中心まで-20℃で24時間以上)か加熱(中心70℃、60℃なら1分以上)へ

キジハタはヒレのトゲが鋭い魚でもあります。内臓を抜くときや黒い棒を引き抜くときは、タオルで頭を押さえて、トゲに手のひらを近づけない持ち方で。エラの縁も切れやすいので、暗い釣り場での処理は特に注意してください。

目視の補助には、アニサキスが白く浮かび上がるブラックライトが役立ちます。私はハピソンのYF-980を使っています。ライトで何が見えて何が見えないかは、2度あたった経験も含めて別記事にまとめています。

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寄生虫を処理したキジハタ、どう食べるのが正解か

正直な話をします。私はこれまで100種類以上の魚を食べてきましたが、キジハタの美味しさはその中で上位とは言えません。まずくもない、中くらいの位置づけです。高級魚のイメージで期待値を上げすぎると、肩透かしを食うかもしれません。

誤解のないように書いておくと、市場でキジハタが高く評価されているのは事実で、白身の質そのものにケチをつけるつもりはありません。ここで書いているのは「100種類以上食べた私個人の順位付けでは中くらい」という、あくまで一人の釣り人の採点です。その前提で、私なりの食べ方の結論を書きます。

理由は身が少し硬いこと。普通の厚さの刺身や、煮付け・揚げ物にすると、この硬さが微妙に働きます。汁物にしても、思ったほど出汁が出ません。だから私の中でキジハタは「薄造り」か「干物」の2択です。

  • 薄造り——とにかく薄く切る+寝かせるのは必須。この2つだけで別物の美味しさになる
  • 干物——硬めの身質が干すことでちょうどよくなる。数が釣れた日の消化先としても優秀
  • アクアパッツァ——見栄えがして家族が喜ぶので、私もたまに作ります

刺身にするなら、フグ刺しのイメージで薄く引いて、最低でも1日——私は2〜3日寝かせてから食べています。釣った当日に厚めに切ると「硬いだけの白身」になりがちで、キジハタがまずいと言われる原因の半分はこれだと思っています。

干物の作り方は一般的な手順で大丈夫です。開いて塩水(海水程度の濃さ)に30分〜1時間浸けて、風通しの良い場所で半日〜1日干すだけ。冷蔵庫の中で1〜2日乾かす「冷蔵庫干し」でも作れます。干す前に皮やヒレまわりの黒い粒を取っておけば、見た目も気になりません。焼くと身がほどよく締まって、キジハタの硬さがちょうど良い方向に働いてくれます。

キジハタ(アコウ)の寄生虫のよくある質問

Q. スーパーで買ったアコウは大丈夫?

外から見える虫(リリアトレマ・ペンネラ類)が付いた個体は市場で値が付きにくいため、目立つ個体は店頭まで残りにくいと考えられます。とはいえ選別は完璧ではないので、買った個体でも皮とヒレまわりは一度見ておくと安心です。仮に黒い粒があっても無害なので、取り除けば問題ありません。刺身用のサクなら、目視で白い糸状の虫がないかだけ確認を。ちなみに私の地元では、最近スーパーでも手頃な値段で見かけるようになりました。高い値札のときは私も手が伸びませんが、安く出ている日なら買って食べるのもアリだと思っています。相場はこちらの記事にまとめています。

Q. キジハタとアコウは同じ魚?

同じ魚です。標準和名がキジハタで、関西を中心に「アコウ」と呼ばれます。地域によって呼び方が違うだけで、寄生虫のリスクも食べ方も変わりません。ちなみに「アコウダイ」という深海の赤い魚は別種なので、検索するときは混同に注意してください。

Q. 黒い粒ごと食べてしまいました。大丈夫?

リリアトレマは人の体内では成長できないため、食べてしまっても害はないとされています。受診が必要になるのはアニサキス(白い糸状)を生きたまま食べた場合で、食後に激しい腹痛が出たら消化器内科へ。黒い粒は心配いりません。

Q. 寄生虫が付いた個体は味が落ちますか?

私の経験では、黒い粒や体表の虫と身の味に、はっきりした関係は感じていません。見つけたら取り除いて、あとは普通に食べています。ただし見た目に抵抗がある場合は、干物や加熱料理に回すと気にならなくなります。

Q. オオモンハタとどちらが寄生虫が多い?

私の実測では、オオモンハタ(約100匹)よりキジハタ(200匹以上)のほうが遭遇頻度は高い印象です。特にリリアトレマの黒い粒はキジハタでよく見ます。オオモンハタの実測データは別記事にまとめています(別記事では体表の虫を「ペンネラ」「イカリムシ」と分けて数えていますが、いずれも本記事で言うヒジキムシ科のカイアシ類の仲間です)。

まとめ|見た目は騒がしいが、処理すれば怖くない魚

✔️ この記事の結論
・キジハタ(アコウ)の寄生虫遭遇は7〜8匹に1匹(夏1/5・冬1/10)
・大半は無害なリリアトレマ(黒い粒)とペンネラ類(黒い棒)。ヒレまわりが定位置
・危険なアニサキスは1%以下。しかも内臓未処理の個体のみだった
・対策は釣り場で内臓を抜く+刺身前の目視。ただし目視は完璧ではない(私自身、別の魚で2度すり抜けられている)
・確実に防ぐなら冷凍(-20℃で24時間以上)か加熱(中心70℃)
・食べるなら薄造り(薄く+寝かせ必須)か干物

キジハタは、黒い粒や棒のせいで損をしている魚だと思います。正体さえ知っていれば、どれも怖い虫ではありません。正しく処理して、数が釣れる時代になったアコウを気楽に楽しんでください。

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