クロダイ(チヌ)とは?年無し・キビレとの違い・生態から味まで|300匹釣った釣具屋店員監修

岩の上に横たわるクロダイの頭部のアップ

こんにちは、つりはる編集長のはるです。

クロダイは、日本の釣り人が一番よく見る大型魚のひとつです。河口にも港にもサーフにもいて、都市部の運河にすらいます。

それなのに「実はよく知らない」という人が多い魚でもあります。チヌと同じ魚なのか、キビレとどう違うのか、なぜ「まずい」と言われるのか——調べても図鑑的な説明ばかりで、釣り人が知りたい形で書かれていない。

釣り上げたクロダイ(チヌ)

この記事は、実際に釣って、見て、食べてきた人間の目線でクロダイをまとめたものです。監修してくれた釣具屋店員のみきやは、ルアーだけで300匹以上のチヌを釣っています。図鑑には載らない「個体差」の話まで書きます。

目次

クロダイとは|60秒で分かる基本

項目内容
標準和名クロダイ(黒鯛)
別名チヌ(主に関西)/カワダイ/ケイズ/チンチン ほか
分類スズキ目 タイ科 クロダイ属
分布北海道南部〜九州。内湾・河口・港湾
大きさよく釣れるのは25〜45cm。50cm超で「年無し」
食性雑食。カニ・エビ・貝・ゴカイ・海藻・スイカまで
晩秋〜冬(寒チヌ)
釣り方フカセ/落とし込み/ルアー(チニング)

まず押さえるべきは3つです。

  • クロダイ=チヌ。同じ魚を関東・関西で呼び分けているだけ
  • 汽水に強く、川もかなり上る。だから都市部でも釣れる
  • 個体差が非常に大きい。味の評価が割れるのは、これが理由

クロダイとチヌは、まったく同じ魚です。関東で「クロダイ」、関西で「チヌ」と呼ぶだけの違いで、ルアーで狙う釣りを「チニング」と呼びます。

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呼び名|クロダイ・チヌ・そして出世魚としての名前

なぜ2つの名前があるのか

「チヌ」のほうが古い呼び名です。大阪湾の古称「茅渟の海(ちぬのうみ)」でよく獲れたことに由来する、というのが通説。関西では今でもチヌのほうが通りがいいです。

「クロダイ」は見た目そのままの名前。真鯛を黒くしたような姿から来ています。検索する人も、関東はクロダイ、関西はチヌで分かれます。

どちらが正しいということはありません。釣具屋の店頭でも、お客さんによって呼び方が変わります。関東から来た人は「クロダイ」、関西の人は「チヌ」——同じ魚の話をしているのに、言葉だけが違う。

ルアーの釣りが「チニング」と呼ばれるのは、この釣りが関西発だからです。クロダイングとは誰も言いません。

成長で名前が変わる|出世魚です

サイズの目安呼び名ひとこと
〜15cmチンチン手のひらサイズ。港内に群れる
15〜25cmカイズ(ケイズ)数釣りできるサイズ
25〜40cmクロダイ/チヌ一般的に「釣れた」と言えるサイズ
50cm超年無し(としなし)年齢が数えられないほど大きい、の意味

「年無し」は釣り人の間だけで通じる呼び方です。50cmを超えると鱗の年輪が読みにくくなることから来ている、と言われています。チニングでもフカセでも、年無しは一つの区切りとして扱われます。

日本記録は70cm台後半で、これは相当な化け物です。50cmでも一生に何本という人が普通だと思ってください。

ちなみに「年無し」の下にも呼び方があります。40cm台は「良型」、45cmを超えると「年無し手前」という言い方をする人もいる。厳密な定義があるわけではなく、釣り人の間の感覚的な区切りです。

稚魚・幼魚はどこにいるのか

手のひらサイズの「チンチン」は、港の中に群れています。常夜灯の下や、船の際を覗くと普通に見つかります。

サビキやちょい投げをしていて、意図せず釣れることもよくあります。小さくても歯はしっかりしているので、針を外すときは指を入れないでください。

稚魚のうちは、より浅くて塩分の薄い場所を好みます。河口の奥や、干潟の潮だまりにいることも多い。浅い場所で育ち、成長するにつれて行動範囲を広げていく——というのがクロダイの一生です。

小さい個体は、できればリリースしてください。成長が遅い魚なので、30cmになるまでに5年ほどかかります。

地方名と、英語での呼び方

地域ごとの呼び名も多い魚です。チンダイ・クロチヌ・カワダイ・シルコなど、地方によってかなり変わります。

英語では Blackhead seabream、または Japanese black porgyporgy はタイ科の魚を指す言葉です。海外の釣り情報を探すときは、この名前で調べると出てきます。

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似ている魚との見分け方

釣り場で間違えやすいのは3種類です。

キビレ|一番間違えやすい

ヒレが黄色ければキビレ——これが一番早い判別です。尻ビレと腹ビレ、尾ビレの下側が黄色く染まります。

ただしクロダイでも薄く黄色がかる個体がいるので、確実に見るなら側線上のウロコの枚数まで数えます。詳しくはこちらに分けました。

キビレは河口や汽水域に多く、クロダイより濁りに強いです。チニングをしていると、同じ場所で両方釣れます。狙い方も道具もまったく同じなので、区別せずに投げて構いません。

産卵期が正反対というのも面白いところで、クロダイが春に産卵するのに対し、キビレは秋です。つまり旬もずれます。

ヘダイ|顔つきが違います

ヘダイは口先が丸く、おでこが張っています。クロダイのほうが面長で、口先が尖って見えるのが違い。体色も、ヘダイは全体に銀色で黒みが少ないです。

味はヘダイのほうが安定して良いという人が多く、市場でもヘダイのほうが扱いやすい魚とされています。

真鯛|並べれば一目瞭然

クロダイ(左)と真鯛(右)の比較

色が違います。真鯛は赤、クロダイは黒か銀。並べてしまえば間違えようがありません。

ただし歯を見ると面白いです。クロダイの歯は、貝を噛み砕くための臼歯が発達しています。口の奥に、人間の奥歯のような平たい歯が並んでいる。指を入れると本当に危ないので、フィッシュグリップを使ってください。

針を外すときも、手を入れないでください。クロダイは口の中でも暴れます。プライヤーで挟んで外すのが安全ですし、魚のダメージも小さく済みます。

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もうひとつ、慣れると分かるのが体高です。クロダイは真鯛より平たく、体高がある。横から見たときのシルエットが、明らかに違います。釣り上げた瞬間の「厚み」で分かるようになります。

引きもまったく別物です。真鯛が沖へ走るのに対し、クロダイは足元へ突っ込みます。テトラや敷石にラインを擦りつけて切りにくるのがクロダイ。同じサイズなら、獲るのが難しいのはクロダイのほうだと思います。

味と価格の違い

真鯛は「ハズレでもそこそこ」、クロダイは「当たりとハズレの落差が大きい」——これが食味の一番の違いです。

クロダイ真鯛
身質締まっている。歯ごたえがある上品でやわらかい
濃い。噛むと甘みが出る淡白で繊細
個体差非常に大きい小さい
価格安い。真鯛の数分の一のことも高い
入手釣るのが早いスーパーでも買える

状態のいいクロダイなら、真鯛に負けていません。むしろ「噛んで味が出る」のはクロダイのほうだと感じています。詳しい比較はこちらです。

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クロダイの生態|「淡水でも生きられる海の魚」です

汽水どころか、真水に近い場所まで入ります

クロダイの一番の特徴は、塩分の変化に異常に強いことです。海はもちろん、河口の汽水域、さらに川をかなり上った場所にもいます。

海から数km上流の、ほぼ真水のような場所で釣れることもあります。これができる大型魚は日本の沿岸ではかなり珍しいです。だから都市部の運河や港でも成立する釣りになっています。

この汽水耐性が、味の個体差にも直結します。きれいな外洋寄りにいる個体と、河口の奥にいる個体では、食べているものも水質もまったく違うからです。

何でも食べます|スイカでも釣れる魚

クロダイは徹底した雑食です。

  • 甲殻類:カニ・エビ。これが主食で、ルアーもこれを模しています
  • 貝類:カキ・イガイ。殻ごと噛み砕いて食べます
  • ゴカイ類:エサ釣りの定番
  • 海藻:アオサなども食べる
  • スイカ・トウモロコシ・サナギ本当に釣りエサとして使われています

スイカで釣る「スイカ釣り」は実在します。冗談のようですが、夏場に成立する立派な釣法で、地域によっては定番です。

この食性の広さが、釣り方の多さにつながっています。フカセもルアーも落とし込みも、全部このおかげで成立します。

成長は遅く、寿命は長い

クロダイは、思っているよりずっと長生きします。寿命は10年以上、大型なら20年近い個体もいると言われています。

年齢の目安サイズ呼び名
1年10cm前後チンチン
2〜3年20cm前後カイズ
5年前後30cm台クロダイ/チヌ
10年以上50cm前後年無し

つまり50cmの1匹は、10年以上その海で生き延びてきた個体です。釣り上げたときの重みが少し変わるはずです。成長が遅いぶん、大型が減ると回復に時間がかかる魚でもあります。

とにかく警戒心が強い

クロダイの一番の特徴は、賢さです。足音・人影・ラインの存在にすぐ反応します。同じ場所に何度も通うと、明らかに反応が落ちていくのが分かります。

だから釣り方も「気づかせない工夫」が中心になります。エサ釣りなら仕掛けを軽く、ルアーなら誰も通していない層を通す。力任せでは釣れない魚です。

そのくせ、掛かってからは異常に走ります。足元に突っ込んで、テトラや敷石でラインを切りにくる。50cm級だと、ドラグを出さずに止めるのはまず無理だと思ってください。

産卵は春|「乗っ込み」と呼ばれます

4〜6月ごろ、産卵のために浅場へ入ってきます。これを「乗っ込み」と呼び、年間で一番大型が釣れる時期です。

ただしこの時期のクロダイは、食味としては落ちます。産卵に体力を使うためで、一番釣れる時期と、一番おいしい時期がずれているのがこの魚の厄介なところ。「クロダイはまずい」という評判は、ここから来ていると考えています。

おもしろいのは、性転換することです。クロダイは若いうちはほぼオスで、成長するとメスに変わる個体が出てきます。つまり大型はメスが多いということになります。

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★釣り人だけが知っている「個体差」

ここからが、図鑑に載っていない話です。

クロダイは、同じ魚とは思えないほど個体差があります。見た目も、においも、味も。これを知らないまま1匹目を食べて、嫌いになる人が本当に多い。

サーフで釣れた銀色のクロダイ
きれいな場所の個体河口の奥・工業地帯の個体
体色銀色に近い。白っぽい黒ずんでいる
におい磯の香り/無臭持った瞬間に分かる独特のにおい
真鯛に匹敵する泥臭さが残ることがある
引き強い・突っ込む同じくらい強い
持ち帰り迷わず持ち帰る編集部では逃がすことが多い

なぜここまで差が出るのか

理由は、クロダイが「その場所のものを食べて、その場所に居つく」魚だからです。

回遊魚は広い海を移動するので、1匹の味が特定の場所に左右されません。ところがクロダイは違う。同じ湾の中でも、河口の奥にいる個体と沖の堤防にいる個体は、別の暮らしをしています。食べているものが違えば、身のにおいも変わります。

そこに雑食性が乗ります。カニやエビだけを食べている個体と、排水口の周りで何でも食べている個体では、同じ魚種でも中身がまるで違う。これが個体差の正体です。

「クロダイはまずい」と言う人と「真鯛より旨い」と言う人が両方いるのは、両方とも正しいからです。食べた個体が違うだけで。

見分けるポイントは3つ

  • 体色:銀色に近いほど良い。黒ずんでいるほど、濁った場所で暮らしていた
  • におい持った瞬間に判断できる。磯の香り以外がしたら要注意
  • 釣れた場所:外洋に近いほど良い。河口の奥・運河・工業地帯は当たり外れが大きい

一番あてになるのはにおいです。体色は光の当たり方でも変わりますし、場所も例外があります。ですが、においだけは嘘をつきません。

体色は、その個体がどこで暮らしてきたかの記録です。浅くて濁った場所にいる個体ほど黒く、外洋に近いほど銀色になります。サーフや外洋の堤防で釣れる個体は、真鯛と間違えそうなくらい銀色をしています。

きれいな海で釣れたクロダイ

編集部のはるはキャッチアンドイート派ですが、クロダイは逃がすことのほうが多いです。ぱっと見て「これは臭い」と分かる個体がいるから。その代わりきれいな場所の寒い時期の1匹は別格だと言っています。

においは、持った瞬間に分かります。磯の香りとは明らかに違う、油や泥に近いにおいがする個体がいる。その勘はだいたい当たります。

引きの強さは、きれいでも黒くても変わりません。釣りとしての面白さは、どの個体でも同じです。だから「釣って楽しむ」だけなら、場所を選ぶ必要はありません。持ち帰るかどうかだけ、その場で判断すればいい。

この判断基準と、実際の食べ方はこちらにまとめました。

クロダイはどこにいるのか

「近所の海にいるのか」が一番知りたいところだと思います。結論、たいていの街にいます。

場所いる?特徴
河口・汽水域一番の本命。都市部の川でも十分いる
港湾・運河船の際、敷石、カキ殻。年中いる
堤防・テトラキワに着く。落とし込みの定番
干潟上げ潮で入ってくる。浅いほど良い
サーフ数は少ないが体色がきれいな個体が出る
フカセの本場。大型が期待できる

探すときの目印は3つです。

  • 浅い:水深1〜2mで十分。むしろ浅いほうがいい
  • 底が硬い:石・敷石・カキ殻。泥だけの場所は薄い
  • エサがあるカニが歩いている・貝が付いている。これが一番あてになる

時間帯によっても居場所が変わります

クロダイは、潮の動きに合わせて移動します。上げ潮で浅場に入り、下げ潮で深いほうへ抜けていく。だから同じ場所でも、時間によって「いる/いない」が変わります。

どこにいるか狙い方
上げ潮浅場・干潟・岸際に入ってくるここが一番のチャンス
満潮前後岸際のキワ・シャロー足元を丁寧に
下げ潮深みへ抜けていく少し沖・カケアガリ
潮が止まっている動かない反応が鈍い。休憩にあてる

夜は警戒心が下がって、岸際まで寄ってきます。昼間は近づけない浅場にも、暗くなると平気で入ってくる。足元だけで釣れる日があるのは、このためです。

都市部でも本当にいます

「こんな汚い川にいるわけがない」と思う場所にいます。工場が並ぶ運河、コンクリートで固められた都市河川、船が行き交う港の中——むしろそういう場所のほうが数は多いことすらあります。

理由は、エサが多いから。護岸にはカキやイガイが付き、敷石にはカニがいる。クロダイにとっては餌場です。

ただし、そういう場所の個体は食味の当たり外れが大きいので、釣りとして楽しむ場所と、食べる魚を獲る場所は分けて考えるのが現実的です。

干潮のときに一度見に行くと、底の様子が分かります。カニが歩いていない場所には、たいていクロダイもいません。釣り場選びは、この確認だけでかなり精度が上がります。

クロダイは「増えすぎている」魚でもあります

近年、クロダイは各地で漁業被害を出しています。アサリ・カキ・ノリ・アユの稚魚——養殖や漁業の対象を食べてしまう。

原因は、分布の北上と個体数の増加だと言われています。水温の上昇で生息域が広がり、もともといなかった場所でも定着しているという報告があります。

釣り人にとっては「増えている=釣りやすい」ですが、地域によっては駆除の対象です。リリースが必ずしも歓迎されない海域もあります。行く場所のルールは事前に確認してください。

なぜクロダイだけが問題になるのか——理由は、貝を殻ごと噛み砕ける歯を持っているからです。他の魚が食べられないアサリやカキを、そのまま食べてしまう。ノリの養殖網も食い破ります。

もともと関西より南に多かった魚が、東北や北陸でも普通に見られるようになった——そういう報告が各地から出ています。釣り人にとっては釣り場が増えたことになりますが、漁業者にとっては別の話です。

釣り人としてできることは、そう多くありません。ただ「その海域のルールを知ってから行く」のは最低限だと思っています。

  • リリース禁止・推奨されない海域がある。とくに養殖場の周辺
  • 持ち帰り数に制限がある場所もある
  • 釣り禁止区域が増えている。漁業とのトラブルが原因のことも

「増えているから何をしてもいい」でも「駆除すべき害魚」でもありません。状態のいい個体をきちんと持ち帰って食べる——釣り人がやれる一番まっとうな向き合い方は、それだと思います。

これは「食べる価値がない魚」という意味ではありません。むしろ状態のいい個体を持ち帰って食べることは、地域にとっても悪い話ではないと考えています。

クロダイの釣り方|大きく3つあります

釣り方特徴向いている人
フカセ釣り撒き餌で寄せる。伝統的で数が出る腰を据えてやりたい
落とし込み・前打ち堤防のキワにエサを落とす。カニやイガイを使う歩いて探りたい
ルアー(チニング)荷物が少なく、思い立って行ける。近年一番伸びている短時間で行きたい・道具を増やしたくない

いま一番始めやすいのはルアー(チニング)です。撒き餌が要らず、ロッド1本とルアーケース1個で成立します。河口や港湾なら、都市部でも十分狙えます。

何を投げるかは、レンジ(層)と底質で決まります。

3つの釣り方は、何が違うのか

違うのは「魚を寄せるか、こちらから探すか」です。

フカセは撒き餌で寄せる釣り。その場に留まって、時間をかけて食わせます。準備は重いですが、寄せられるぶん数は一番出ます。磯や堤防で、腰を据えてやる釣りです。

落とし込み・前打ちは、堤防のキワを歩きながら探る釣り。カニやイガイを、壁に沿って落としていきます。クロダイが壁に着く習性を、そのまま利用した釣り方。関西で磨かれた、かなり専門性の高い釣りです。

ルアーは撒き餌が要らず、荷物が一番少ない。1〜2時間だけ行く、という使い方ができます。数だけならエサ釣りに負けますが、行ける回数で見ると年間釣果は逆転することもあります。

エサ釣りでやるなら、フカセか落とし込み。撒き餌で寄せられるぶん、数だけならルアーより出ます。準備と後片付けの手間をどう見るか、という選び方になります。

クロダイは美味しいのか

状態がよければ、真鯛に匹敵します。身が締まっていて、噛むと甘みが出る白身です。

ただし個体差がすべて。真鯛が「ハズレでもそこそこ」なのに対し、クロダイは当たりとハズレの落差が大きい。これが評価の分かれる最大の理由です。

市場での評価は、正直あまり高くありません

スーパーで見かけることはほとんどありません。並んでいても真鯛より明らかに安いのが普通です。

理由は2つ。①一番多く出回るのが、味の落ちる産卵期だから。②個体差が大きく、店として品質を保証しづらいから。つまり「魚が悪い」のではなく「流通に乗せにくい」魚。だからこそ、釣り人が一番おいしい状態で食べられる魚でもあります。

逆に、状態のいい個体を選べる釣り人にとっては、これほどコスパのいい魚もありません。真鯛級の白身が、近所の河口で釣れるのですから。

時期状態
晩秋〜冬(寒チヌ)脂を蓄える別格
春(乗っ込み)産卵に向かう産卵前は悪くない。後は落ちる
初夏〜真夏産卵後で痩せる一番落ちる
回復して食い始める徐々に上がる

身は白身で、締まっています。真鯛より歯ごたえがあり、噛むほど味が出るタイプです。刺身なら少し薄めに引いたほうが食べやすいと思います。

皮と身の間に旨味があるので、皮を引かずに湯引きにするのがおすすめです。クロダイは皮が厚いぶん、この食べ方が向いています。

においが気になる個体でも、火を通せばほぼ分かりません。煮付け・唐揚げ・ムニエルあたりに回せば、まず外しません。無理に刺身にして、クロダイ自体を嫌いになるほうがもったいない。

「まずい」と言われる理由をきちんと検証した記事と、実際の食べ方をまとめた記事が別にあります。

クロダイと日本人|なぜ関西でこれほど人気なのか

「チヌ」という呼び名が示すとおり、この魚は関西と深い関係があります。

大阪湾の古称「茅渟の海(ちぬのうみ)」で大量に獲れたことが名前の由来、というのが通説です。大阪湾はクロダイにとって理想的な環境——川が流れ込む内湾で、浅くて、エサが多い。

そのため関西ではチヌ釣りが独自の文化になりました。フカセ釣りも落とし込みも、関西で磨かれた釣り方です。「チヌ師」と呼ばれる専門の釣り人がいるほどで、これは他の魚ではあまり見られません。

なぜ「チヌ師」という言葉があるのか

クロダイには、この魚だけを追う専門の釣り人がいます。「チヌ師」と呼ばれ、他の魚には目もくれず、年間を通してクロダイだけを狙う人たちです。

これは他の魚ではあまり見られません。理由は、クロダイが「攻略しがいのある魚」だからだと思います。警戒心が強く、簡単には釣れない。それでいて身近にいて、年中狙える。

近くにいるのに、簡単には釣れない。この距離感が、人を通わせるのだと思います。釣具メーカーがチヌ専用のロッドやルアーを次々に出すのも、この層が厚いからです。

「真鯛の代わり」ではありません

クロダイは、真鯛より格下の魚として扱われがちです。市場価格も真鯛より安く、「安い黒い鯛」という見られ方をします。

ただ、地域によってはまったく評価が違います。関東の一部では祝いの席に出るという話もありますし、状態のいい個体を知っている人ほど評価が高いのがこの魚です。

評価が割れるのは、魚のせいではなく「どの個体を食べたか」のせい。そこがクロダイという魚を一番よく表しています。

クロダイについてよくある質問

Q. クロダイとチヌは違う魚ですか?

同じ魚です。関東で「クロダイ」、関西で「チヌ」と呼び分けているだけです。ルアーで狙う釣りは「チニング」と呼ばれます。

Q. 「年無し」とは何cmからですか?

50cmからです。年齢が数えられないほど大きい、という意味の釣り人用語で、一つの区切りとして扱われます。50cmでも一生に何本、という人が普通です。

Q. クロダイは淡水でも生きられますか?

かなり真水に近い場所まで入ります。海から数km上流で釣れることもあります。この汽水耐性の高さが、都市部の運河でも釣れる理由です。

Q. キビレとの見分け方は?

ヒレが黄色ければキビレです。尻ビレ・腹ビレ・尾ビレの下側が黄色く染まります。確実に見るなら側線上のウロコの枚数まで数えます。

Q. クロダイの歯は危険ですか?

危険です。貝を噛み砕くための臼歯が発達していて、口の奥に平たい歯が並んでいます。指を入れず、フィッシュグリップを使ってください。

Q. 英語では何と言いますか?

Blackhead seabream、または Japanese black porgy です。porgy はタイ科の魚を指す言葉です。

Q. 稚魚・幼魚はどこにいますか?

港内や河口の浅場に群れています。手のひらサイズは「チンチン」と呼ばれ、サビキやちょい投げで意図せず釣れることもあります。

Q. クロダイは増えているんですか?

各地で増加が報告されています。水温の上昇で分布が北上し、アサリ・カキ・ノリの食害が問題になっている海域もあります。リリースが歓迎されない場所もあるので、行く前にルールを確認してください。

Q. クロダイの寿命はどれくらいですか?

10年以上、大型なら20年近い個体もいると言われています。50cmの1匹は、10年以上その海で生き延びてきた個体ということになります。

Q. なぜ関西では「チヌ」と呼ぶのですか?

大阪湾の古称「茅渟の海(ちぬのうみ)」で大量に獲れたから、というのが通説です。「チヌ」のほうが古い呼び名で、関西では今でもこちらが通ります。

Q. クロダイは真鯛より味が落ちますか?

個体によります。状態のいいクロダイは真鯛に匹敵します。ただ真鯛が「ハズレでもそこそこ」なのに対し、クロダイは落差が大きい。これが評価の分かれる理由です。

Q. 旬はいつですか?

晩秋から冬です。この時期のものは「寒チヌ」と呼ばれ、味は別格です。一番釣れるのは春の乗っ込みですが、味は落ちます。

Q. 何を食べていますか?

フカセ・落とし込み・ルアーの選び方は、こちらで詳しく比較しています。

雑食で、ほぼ何でも食べます。カニ・エビ・貝・ゴカイ・海藻のほか、スイカやトウモロコシが釣りエサとして実際に使われています。

まとめ

クロダイは、身近なのに誤解の多い魚です。

  • クロダイ=チヌ。同じ魚の関東・関西の呼び分け
  • 50cm超で「年無し」。釣り人にとっての一つの到達点
  • 汽水に強く、川もかなり上る。だから都市部でも狙える
  • 雑食。スイカでも釣れる。釣り方が多いのはこのため
  • 個体差がすべて。きれいな場所の寒い時期のものは、真鯛に匹敵する

最後に、この記事で一番伝えたかったことを繰り返します。

クロダイの評価が割れるのは、魚のせいではなく「どの個体に当たったか」のせいです。黒ずんだ河口の個体を1匹食べただけで「まずい魚」と決めてしまうのは、あまりにもったいない。

逆に言えば、選ぶ目さえ持てば失敗しません。銀色に近い体色、においがしないこと、寒い時期——この3つだけ覚えておけば、当たりを引ける確率はかなり上がります。

そして、釣りとしては場所を選ばず楽しめます。持ち帰るかどうかは、その場で決めればいいだけの話です。

まずは1匹釣ってみてください。河口でも港でも、たいていの街から30分以内に釣り場があるはずです。それがこの魚の一番の魅力です。

監修:みきや(現役の釣具店スタッフ。売り場はルアー担当)
生態・釣り方・サイズの記述を確認しました。

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