こんにちは、つりはる編集長のはるです。
クロダイは、日本の釣り人が一番よく見る大型魚のひとつです。河口にも港にもサーフにもいて、都市部の運河にすらいます。
それなのに「実はよく知らない」という人が多い魚でもあります。チヌと同じ魚なのか、キビレとどう違うのか、なぜ「まずい」と言われるのか——調べても図鑑的な説明ばかりで、釣り人が知りたい形で書かれていない。

この記事は、実際に釣って、見て、食べてきた人間の目線でクロダイをまとめたものです。監修してくれた釣具屋店員のみきやは、ルアーだけで300匹以上のチヌを釣っています。図鑑には載らない「個体差」の話まで書きます。
クロダイとは|60秒で分かる基本
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準和名 | クロダイ(黒鯛) |
| 別名 | チヌ(主に関西)/カワダイ/ケイズ/チンチン ほか |
| 分類 | スズキ目 タイ科 クロダイ属 |
| 分布 | 北海道南部〜九州。内湾・河口・港湾 |
| 大きさ | よく釣れるのは25〜45cm。50cm超で「年無し」 |
| 食性 | 雑食。カニ・エビ・貝・ゴカイ・海藻・スイカまで |
| 旬 | 晩秋〜冬(寒チヌ) |
| 釣り方 | フカセ/落とし込み/ルアー(チニング) |
まず押さえるべきは3つです。
- クロダイ=チヌ。同じ魚を関東・関西で呼び分けているだけ
- 汽水に強く、川もかなり上る。だから都市部でも釣れる
- 個体差が非常に大きい。味の評価が割れるのは、これが理由
クロダイとチヌは、まったく同じ魚です。関東で「クロダイ」、関西で「チヌ」と呼ぶだけの違いで、ルアーで狙う釣りを「チニング」と呼びます。
呼び名|クロダイ・チヌ・そして出世魚としての名前
なぜ2つの名前があるのか
「チヌ」のほうが古い呼び名です。大阪湾の古称「茅渟の海(ちぬのうみ)」でよく獲れたことに由来する、というのが通説。関西では今でもチヌのほうが通りがいいです。
「クロダイ」は見た目そのままの名前。真鯛を黒くしたような姿から来ています。検索する人も、関東はクロダイ、関西はチヌで分かれます。
どちらが正しいということはありません。釣具屋の店頭でも、お客さんによって呼び方が変わります。関東から来た人は「クロダイ」、関西の人は「チヌ」——同じ魚の話をしているのに、言葉だけが違う。
ルアーの釣りが「チニング」と呼ばれるのは、この釣りが関西発だからです。クロダイングとは誰も言いません。
成長で名前が変わる|出世魚です
| サイズの目安 | 呼び名 | ひとこと |
|---|---|---|
| 〜15cm | チンチン | 手のひらサイズ。港内に群れる |
| 15〜25cm | カイズ(ケイズ) | 数釣りできるサイズ |
| 25〜40cm | クロダイ/チヌ | 一般的に「釣れた」と言えるサイズ |
| 50cm超 | 年無し(としなし) | 年齢が数えられないほど大きい、の意味 |
「年無し」は釣り人の間だけで通じる呼び方です。50cmを超えると鱗の年輪が読みにくくなることから来ている、と言われています。チニングでもフカセでも、年無しは一つの区切りとして扱われます。
日本記録は70cm台後半で、これは相当な化け物です。50cmでも一生に何本という人が普通だと思ってください。
ちなみに「年無し」の下にも呼び方があります。40cm台は「良型」、45cmを超えると「年無し手前」という言い方をする人もいる。厳密な定義があるわけではなく、釣り人の間の感覚的な区切りです。
稚魚・幼魚はどこにいるのか
手のひらサイズの「チンチン」は、港の中に群れています。常夜灯の下や、船の際を覗くと普通に見つかります。
サビキやちょい投げをしていて、意図せず釣れることもよくあります。小さくても歯はしっかりしているので、針を外すときは指を入れないでください。
稚魚のうちは、より浅くて塩分の薄い場所を好みます。河口の奥や、干潟の潮だまりにいることも多い。浅い場所で育ち、成長するにつれて行動範囲を広げていく——というのがクロダイの一生です。
小さい個体は、できればリリースしてください。成長が遅い魚なので、30cmになるまでに5年ほどかかります。
地方名と、英語での呼び方
地域ごとの呼び名も多い魚です。チンダイ・クロチヌ・カワダイ・シルコなど、地方によってかなり変わります。
英語では Blackhead seabream、または Japanese black porgy。porgy はタイ科の魚を指す言葉です。海外の釣り情報を探すときは、この名前で調べると出てきます。
似ている魚との見分け方
釣り場で間違えやすいのは3種類です。
キビレ|一番間違えやすい
ヒレが黄色ければキビレ——これが一番早い判別です。尻ビレと腹ビレ、尾ビレの下側が黄色く染まります。
ただしクロダイでも薄く黄色がかる個体がいるので、確実に見るなら側線上のウロコの枚数まで数えます。詳しくはこちらに分けました。

キビレは河口や汽水域に多く、クロダイより濁りに強いです。チニングをしていると、同じ場所で両方釣れます。狙い方も道具もまったく同じなので、区別せずに投げて構いません。
産卵期が正反対というのも面白いところで、クロダイが春に産卵するのに対し、キビレは秋です。つまり旬もずれます。
ヘダイ|顔つきが違います
ヘダイは口先が丸く、おでこが張っています。クロダイのほうが面長で、口先が尖って見えるのが違い。体色も、ヘダイは全体に銀色で黒みが少ないです。
味はヘダイのほうが安定して良いという人が多く、市場でもヘダイのほうが扱いやすい魚とされています。
真鯛|並べれば一目瞭然

色が違います。真鯛は赤、クロダイは黒か銀。並べてしまえば間違えようがありません。
ただし歯を見ると面白いです。クロダイの歯は、貝を噛み砕くための臼歯が発達しています。口の奥に、人間の奥歯のような平たい歯が並んでいる。指を入れると本当に危ないので、フィッシュグリップを使ってください。
針を外すときも、手を入れないでください。クロダイは口の中でも暴れます。プライヤーで挟んで外すのが安全ですし、魚のダメージも小さく済みます。
もうひとつ、慣れると分かるのが体高です。クロダイは真鯛より平たく、体高がある。横から見たときのシルエットが、明らかに違います。釣り上げた瞬間の「厚み」で分かるようになります。
引きもまったく別物です。真鯛が沖へ走るのに対し、クロダイは足元へ突っ込みます。テトラや敷石にラインを擦りつけて切りにくるのがクロダイ。同じサイズなら、獲るのが難しいのはクロダイのほうだと思います。
味と価格の違い
真鯛は「ハズレでもそこそこ」、クロダイは「当たりとハズレの落差が大きい」——これが食味の一番の違いです。
| クロダイ | 真鯛 | |
|---|---|---|
| 身質 | 締まっている。歯ごたえがある | 上品でやわらかい |
| 味 | 濃い。噛むと甘みが出る | 淡白で繊細 |
| 個体差 | 非常に大きい | 小さい |
| 価格 | 安い。真鯛の数分の一のことも | 高い |
| 入手 | 釣るのが早い | スーパーでも買える |
状態のいいクロダイなら、真鯛に負けていません。むしろ「噛んで味が出る」のはクロダイのほうだと感じています。詳しい比較はこちらです。

クロダイの生態|「淡水でも生きられる海の魚」です
汽水どころか、真水に近い場所まで入ります
クロダイの一番の特徴は、塩分の変化に異常に強いことです。海はもちろん、河口の汽水域、さらに川をかなり上った場所にもいます。
海から数km上流の、ほぼ真水のような場所で釣れることもあります。これができる大型魚は日本の沿岸ではかなり珍しいです。だから都市部の運河や港でも成立する釣りになっています。
この汽水耐性が、味の個体差にも直結します。きれいな外洋寄りにいる個体と、河口の奥にいる個体では、食べているものも水質もまったく違うからです。
何でも食べます|スイカでも釣れる魚
クロダイは徹底した雑食です。
- 甲殻類:カニ・エビ。これが主食で、ルアーもこれを模しています
- 貝類:カキ・イガイ。殻ごと噛み砕いて食べます
- ゴカイ類:エサ釣りの定番
- 海藻:アオサなども食べる
- スイカ・トウモロコシ・サナギ:本当に釣りエサとして使われています
スイカで釣る「スイカ釣り」は実在します。冗談のようですが、夏場に成立する立派な釣法で、地域によっては定番です。
この食性の広さが、釣り方の多さにつながっています。フカセもルアーも落とし込みも、全部このおかげで成立します。
成長は遅く、寿命は長い
クロダイは、思っているよりずっと長生きします。寿命は10年以上、大型なら20年近い個体もいると言われています。
| 年齢の目安 | サイズ | 呼び名 |
|---|---|---|
| 1年 | 10cm前後 | チンチン |
| 2〜3年 | 20cm前後 | カイズ |
| 5年前後 | 30cm台 | クロダイ/チヌ |
| 10年以上 | 50cm前後 | 年無し |
つまり50cmの1匹は、10年以上その海で生き延びてきた個体です。釣り上げたときの重みが少し変わるはずです。成長が遅いぶん、大型が減ると回復に時間がかかる魚でもあります。
とにかく警戒心が強い
クロダイの一番の特徴は、賢さです。足音・人影・ラインの存在にすぐ反応します。同じ場所に何度も通うと、明らかに反応が落ちていくのが分かります。
だから釣り方も「気づかせない工夫」が中心になります。エサ釣りなら仕掛けを軽く、ルアーなら誰も通していない層を通す。力任せでは釣れない魚です。
そのくせ、掛かってからは異常に走ります。足元に突っ込んで、テトラや敷石でラインを切りにくる。50cm級だと、ドラグを出さずに止めるのはまず無理だと思ってください。
産卵は春|「乗っ込み」と呼ばれます
4〜6月ごろ、産卵のために浅場へ入ってきます。これを「乗っ込み」と呼び、年間で一番大型が釣れる時期です。
ただしこの時期のクロダイは、食味としては落ちます。産卵に体力を使うためで、一番釣れる時期と、一番おいしい時期がずれているのがこの魚の厄介なところ。「クロダイはまずい」という評判は、ここから来ていると考えています。
おもしろいのは、性転換することです。クロダイは若いうちはほぼオスで、成長するとメスに変わる個体が出てきます。つまり大型はメスが多いということになります。
★釣り人だけが知っている「個体差」
ここからが、図鑑に載っていない話です。
クロダイは、同じ魚とは思えないほど個体差があります。見た目も、においも、味も。これを知らないまま1匹目を食べて、嫌いになる人が本当に多い。

| きれいな場所の個体 | 河口の奥・工業地帯の個体 | |
|---|---|---|
| 体色 | 銀色に近い。白っぽい | 黒ずんでいる |
| におい | 磯の香り/無臭 | 持った瞬間に分かる独特のにおい |
| 味 | 真鯛に匹敵する | 泥臭さが残ることがある |
| 引き | 強い・突っ込む | 同じくらい強い |
| 持ち帰り | 迷わず持ち帰る | 編集部では逃がすことが多い |
なぜここまで差が出るのか
理由は、クロダイが「その場所のものを食べて、その場所に居つく」魚だからです。
回遊魚は広い海を移動するので、1匹の味が特定の場所に左右されません。ところがクロダイは違う。同じ湾の中でも、河口の奥にいる個体と沖の堤防にいる個体は、別の暮らしをしています。食べているものが違えば、身のにおいも変わります。
そこに雑食性が乗ります。カニやエビだけを食べている個体と、排水口の周りで何でも食べている個体では、同じ魚種でも中身がまるで違う。これが個体差の正体です。
「クロダイはまずい」と言う人と「真鯛より旨い」と言う人が両方いるのは、両方とも正しいからです。食べた個体が違うだけで。
見分けるポイントは3つ
- 体色:銀色に近いほど良い。黒ずんでいるほど、濁った場所で暮らしていた
- におい:持った瞬間に判断できる。磯の香り以外がしたら要注意
- 釣れた場所:外洋に近いほど良い。河口の奥・運河・工業地帯は当たり外れが大きい
一番あてになるのはにおいです。体色は光の当たり方でも変わりますし、場所も例外があります。ですが、においだけは嘘をつきません。
体色は、その個体がどこで暮らしてきたかの記録です。浅くて濁った場所にいる個体ほど黒く、外洋に近いほど銀色になります。サーフや外洋の堤防で釣れる個体は、真鯛と間違えそうなくらい銀色をしています。

編集部のはるはキャッチアンドイート派ですが、クロダイは逃がすことのほうが多いです。ぱっと見て「これは臭い」と分かる個体がいるから。その代わりきれいな場所の寒い時期の1匹は別格だと言っています。
においは、持った瞬間に分かります。磯の香りとは明らかに違う、油や泥に近いにおいがする個体がいる。その勘はだいたい当たります。
引きの強さは、きれいでも黒くても変わりません。釣りとしての面白さは、どの個体でも同じです。だから「釣って楽しむ」だけなら、場所を選ぶ必要はありません。持ち帰るかどうかだけ、その場で判断すればいい。
この判断基準と、実際の食べ方はこちらにまとめました。

クロダイはどこにいるのか
「近所の海にいるのか」が一番知りたいところだと思います。結論、たいていの街にいます。
| 場所 | いる? | 特徴 |
|---|---|---|
| 河口・汽水域 | ◎ | 一番の本命。都市部の川でも十分いる |
| 港湾・運河 | ◎ | 船の際、敷石、カキ殻。年中いる |
| 堤防・テトラ | ○ | キワに着く。落とし込みの定番 |
| 干潟 | ○ | 上げ潮で入ってくる。浅いほど良い |
| サーフ | △ | 数は少ないが体色がきれいな個体が出る |
| 磯 | ○ | フカセの本場。大型が期待できる |
探すときの目印は3つです。
- 浅い:水深1〜2mで十分。むしろ浅いほうがいい
- 底が硬い:石・敷石・カキ殻。泥だけの場所は薄い
- エサがある:カニが歩いている・貝が付いている。これが一番あてになる
時間帯によっても居場所が変わります
クロダイは、潮の動きに合わせて移動します。上げ潮で浅場に入り、下げ潮で深いほうへ抜けていく。だから同じ場所でも、時間によって「いる/いない」が変わります。
| 潮 | どこにいるか | 狙い方 |
|---|---|---|
| 上げ潮 | 浅場・干潟・岸際に入ってくる | ここが一番のチャンス |
| 満潮前後 | 岸際のキワ・シャロー | 足元を丁寧に |
| 下げ潮 | 深みへ抜けていく | 少し沖・カケアガリ |
| 潮が止まっている | 動かない | 反応が鈍い。休憩にあてる |
夜は警戒心が下がって、岸際まで寄ってきます。昼間は近づけない浅場にも、暗くなると平気で入ってくる。足元だけで釣れる日があるのは、このためです。
都市部でも本当にいます
「こんな汚い川にいるわけがない」と思う場所にいます。工場が並ぶ運河、コンクリートで固められた都市河川、船が行き交う港の中——むしろそういう場所のほうが数は多いことすらあります。
理由は、エサが多いから。護岸にはカキやイガイが付き、敷石にはカニがいる。クロダイにとっては餌場です。
ただし、そういう場所の個体は食味の当たり外れが大きいので、釣りとして楽しむ場所と、食べる魚を獲る場所は分けて考えるのが現実的です。
干潮のときに一度見に行くと、底の様子が分かります。カニが歩いていない場所には、たいていクロダイもいません。釣り場選びは、この確認だけでかなり精度が上がります。
クロダイは「増えすぎている」魚でもあります
近年、クロダイは各地で漁業被害を出しています。アサリ・カキ・ノリ・アユの稚魚——養殖や漁業の対象を食べてしまう。
原因は、分布の北上と個体数の増加だと言われています。水温の上昇で生息域が広がり、もともといなかった場所でも定着しているという報告があります。
釣り人にとっては「増えている=釣りやすい」ですが、地域によっては駆除の対象です。リリースが必ずしも歓迎されない海域もあります。行く場所のルールは事前に確認してください。
なぜクロダイだけが問題になるのか——理由は、貝を殻ごと噛み砕ける歯を持っているからです。他の魚が食べられないアサリやカキを、そのまま食べてしまう。ノリの養殖網も食い破ります。
もともと関西より南に多かった魚が、東北や北陸でも普通に見られるようになった——そういう報告が各地から出ています。釣り人にとっては釣り場が増えたことになりますが、漁業者にとっては別の話です。
釣り人としてできることは、そう多くありません。ただ「その海域のルールを知ってから行く」のは最低限だと思っています。
- リリース禁止・推奨されない海域がある。とくに養殖場の周辺
- 持ち帰り数に制限がある場所もある
- 釣り禁止区域が増えている。漁業とのトラブルが原因のことも
「増えているから何をしてもいい」でも「駆除すべき害魚」でもありません。状態のいい個体をきちんと持ち帰って食べる——釣り人がやれる一番まっとうな向き合い方は、それだと思います。
これは「食べる価値がない魚」という意味ではありません。むしろ状態のいい個体を持ち帰って食べることは、地域にとっても悪い話ではないと考えています。
クロダイの釣り方|大きく3つあります
| 釣り方 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| フカセ釣り | 撒き餌で寄せる。伝統的で数が出る | 腰を据えてやりたい |
| 落とし込み・前打ち | 堤防のキワにエサを落とす。カニやイガイを使う | 歩いて探りたい |
| ルアー(チニング) | 荷物が少なく、思い立って行ける。近年一番伸びている | 短時間で行きたい・道具を増やしたくない |
いま一番始めやすいのはルアー(チニング)です。撒き餌が要らず、ロッド1本とルアーケース1個で成立します。河口や港湾なら、都市部でも十分狙えます。

何を投げるかは、レンジ(層)と底質で決まります。

3つの釣り方は、何が違うのか
違うのは「魚を寄せるか、こちらから探すか」です。
フカセは撒き餌で寄せる釣り。その場に留まって、時間をかけて食わせます。準備は重いですが、寄せられるぶん数は一番出ます。磯や堤防で、腰を据えてやる釣りです。
落とし込み・前打ちは、堤防のキワを歩きながら探る釣り。カニやイガイを、壁に沿って落としていきます。クロダイが壁に着く習性を、そのまま利用した釣り方。関西で磨かれた、かなり専門性の高い釣りです。
ルアーは撒き餌が要らず、荷物が一番少ない。1〜2時間だけ行く、という使い方ができます。数だけならエサ釣りに負けますが、行ける回数で見ると年間釣果は逆転することもあります。
エサ釣りでやるなら、フカセか落とし込み。撒き餌で寄せられるぶん、数だけならルアーより出ます。準備と後片付けの手間をどう見るか、という選び方になります。
クロダイは美味しいのか
状態がよければ、真鯛に匹敵します。身が締まっていて、噛むと甘みが出る白身です。
ただし個体差がすべて。真鯛が「ハズレでもそこそこ」なのに対し、クロダイは当たりとハズレの落差が大きい。これが評価の分かれる最大の理由です。
市場での評価は、正直あまり高くありません
スーパーで見かけることはほとんどありません。並んでいても真鯛より明らかに安いのが普通です。
理由は2つ。①一番多く出回るのが、味の落ちる産卵期だから。②個体差が大きく、店として品質を保証しづらいから。つまり「魚が悪い」のではなく「流通に乗せにくい」魚。だからこそ、釣り人が一番おいしい状態で食べられる魚でもあります。
逆に、状態のいい個体を選べる釣り人にとっては、これほどコスパのいい魚もありません。真鯛級の白身が、近所の河口で釣れるのですから。
| 時期 | 状態 | 味 |
|---|---|---|
| 晩秋〜冬(寒チヌ) | 脂を蓄える | 別格 |
| 春(乗っ込み) | 産卵に向かう | 産卵前は悪くない。後は落ちる |
| 初夏〜真夏 | 産卵後で痩せる | 一番落ちる |
| 秋 | 回復して食い始める | 徐々に上がる |
身は白身で、締まっています。真鯛より歯ごたえがあり、噛むほど味が出るタイプです。刺身なら少し薄めに引いたほうが食べやすいと思います。
皮と身の間に旨味があるので、皮を引かずに湯引きにするのがおすすめです。クロダイは皮が厚いぶん、この食べ方が向いています。
においが気になる個体でも、火を通せばほぼ分かりません。煮付け・唐揚げ・ムニエルあたりに回せば、まず外しません。無理に刺身にして、クロダイ自体を嫌いになるほうがもったいない。
「まずい」と言われる理由をきちんと検証した記事と、実際の食べ方をまとめた記事が別にあります。

クロダイと日本人|なぜ関西でこれほど人気なのか
「チヌ」という呼び名が示すとおり、この魚は関西と深い関係があります。
大阪湾の古称「茅渟の海(ちぬのうみ)」で大量に獲れたことが名前の由来、というのが通説です。大阪湾はクロダイにとって理想的な環境——川が流れ込む内湾で、浅くて、エサが多い。
そのため関西ではチヌ釣りが独自の文化になりました。フカセ釣りも落とし込みも、関西で磨かれた釣り方です。「チヌ師」と呼ばれる専門の釣り人がいるほどで、これは他の魚ではあまり見られません。
なぜ「チヌ師」という言葉があるのか
クロダイには、この魚だけを追う専門の釣り人がいます。「チヌ師」と呼ばれ、他の魚には目もくれず、年間を通してクロダイだけを狙う人たちです。
これは他の魚ではあまり見られません。理由は、クロダイが「攻略しがいのある魚」だからだと思います。警戒心が強く、簡単には釣れない。それでいて身近にいて、年中狙える。
近くにいるのに、簡単には釣れない。この距離感が、人を通わせるのだと思います。釣具メーカーがチヌ専用のロッドやルアーを次々に出すのも、この層が厚いからです。
「真鯛の代わり」ではありません
クロダイは、真鯛より格下の魚として扱われがちです。市場価格も真鯛より安く、「安い黒い鯛」という見られ方をします。
ただ、地域によってはまったく評価が違います。関東の一部では祝いの席に出るという話もありますし、状態のいい個体を知っている人ほど評価が高いのがこの魚です。
評価が割れるのは、魚のせいではなく「どの個体を食べたか」のせい。そこがクロダイという魚を一番よく表しています。
クロダイについてよくある質問
Q. クロダイとチヌは違う魚ですか?
同じ魚です。関東で「クロダイ」、関西で「チヌ」と呼び分けているだけです。ルアーで狙う釣りは「チニング」と呼ばれます。
Q. 「年無し」とは何cmからですか?
50cmからです。年齢が数えられないほど大きい、という意味の釣り人用語で、一つの区切りとして扱われます。50cmでも一生に何本、という人が普通です。
Q. クロダイは淡水でも生きられますか?
かなり真水に近い場所まで入ります。海から数km上流で釣れることもあります。この汽水耐性の高さが、都市部の運河でも釣れる理由です。
Q. キビレとの見分け方は?
ヒレが黄色ければキビレです。尻ビレ・腹ビレ・尾ビレの下側が黄色く染まります。確実に見るなら側線上のウロコの枚数まで数えます。
Q. クロダイの歯は危険ですか?
危険です。貝を噛み砕くための臼歯が発達していて、口の奥に平たい歯が並んでいます。指を入れず、フィッシュグリップを使ってください。
Q. 英語では何と言いますか?
Blackhead seabream、または Japanese black porgy です。porgy はタイ科の魚を指す言葉です。
Q. 稚魚・幼魚はどこにいますか?
港内や河口の浅場に群れています。手のひらサイズは「チンチン」と呼ばれ、サビキやちょい投げで意図せず釣れることもあります。
Q. クロダイは増えているんですか?
各地で増加が報告されています。水温の上昇で分布が北上し、アサリ・カキ・ノリの食害が問題になっている海域もあります。リリースが歓迎されない場所もあるので、行く前にルールを確認してください。
Q. クロダイの寿命はどれくらいですか?
10年以上、大型なら20年近い個体もいると言われています。50cmの1匹は、10年以上その海で生き延びてきた個体ということになります。
Q. なぜ関西では「チヌ」と呼ぶのですか?
大阪湾の古称「茅渟の海(ちぬのうみ)」で大量に獲れたから、というのが通説です。「チヌ」のほうが古い呼び名で、関西では今でもこちらが通ります。
Q. クロダイは真鯛より味が落ちますか?
個体によります。状態のいいクロダイは真鯛に匹敵します。ただ真鯛が「ハズレでもそこそこ」なのに対し、クロダイは落差が大きい。これが評価の分かれる理由です。
Q. 旬はいつですか?
晩秋から冬です。この時期のものは「寒チヌ」と呼ばれ、味は別格です。一番釣れるのは春の乗っ込みですが、味は落ちます。
Q. 何を食べていますか?
フカセ・落とし込み・ルアーの選び方は、こちらで詳しく比較しています。

雑食で、ほぼ何でも食べます。カニ・エビ・貝・ゴカイ・海藻のほか、スイカやトウモロコシが釣りエサとして実際に使われています。
まとめ
クロダイは、身近なのに誤解の多い魚です。
- クロダイ=チヌ。同じ魚の関東・関西の呼び分け
- 50cm超で「年無し」。釣り人にとっての一つの到達点
- 汽水に強く、川もかなり上る。だから都市部でも狙える
- 雑食。スイカでも釣れる。釣り方が多いのはこのため
- 個体差がすべて。きれいな場所の寒い時期のものは、真鯛に匹敵する
最後に、この記事で一番伝えたかったことを繰り返します。
クロダイの評価が割れるのは、魚のせいではなく「どの個体に当たったか」のせいです。黒ずんだ河口の個体を1匹食べただけで「まずい魚」と決めてしまうのは、あまりにもったいない。
逆に言えば、選ぶ目さえ持てば失敗しません。銀色に近い体色、においがしないこと、寒い時期——この3つだけ覚えておけば、当たりを引ける確率はかなり上がります。
そして、釣りとしては場所を選ばず楽しめます。持ち帰るかどうかは、その場で決めればいいだけの話です。
まずは1匹釣ってみてください。河口でも港でも、たいていの街から30分以内に釣り場があるはずです。それがこの魚の一番の魅力です。
監修:みきや(現役の釣具店スタッフ。売り場はルアー担当)
生態・釣り方・サイズの記述を確認しました。



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